海なし県である埼玉県で生まれ育った筆者は、海に対するあこがれが強かったため、5年ほど前に日常的に海が臨める静岡県伊東市に引っ越した。
東伊豆に位置する伊東市には多くの観光スポットがあるので、休日のレジャーは近場で済ませることができる。
そのせいもあり、これまで西伊豆には一度も足を運んだことがなかった。
しかし、西伊豆にも数多くの観光名所があるし、ことに海越しに富士山が臨める点は大きな魅力だ。
そこで、今日は西伊豆にある富士山のビュースポット、御浜岬を目指してドライブ旅に出掛けることにした。
もし公共交通機関で東伊豆から西伊豆にアクセスするとなると、路線バスを利用することになるが、本数が少ないので不便だ。
その点、マイカーなら時間を気にすることなく自由気ままに移動できる。
カーライフには色々な楽しい側面があるが、こうした利便性の高さも大きな魅力といえるだろう。
まずは「だるま山高原レストハウス」を目指す
旅の足には、マイカーであるスズキ・ハスラー(グレードはG、MT&4WD仕様)を利用した。
御浜岬までノンストップで走るのではなく、まずはビュースポットとして人気のある「だるま山高原レストハウス」に立ち寄るプランだ。
東伊豆方面へと向かう宇佐美大仁道路に入ると、しばしの直線区間の後、上り勾配の曲がりくねった道路が続く。
勾配はそれほど急ではなく、コーナーも比較的ゆるやかな箇所が多いので、ほぼ3速に入れっぱなしで走ることができる。
3速ならエンジン回転はそれほど高くならないので、室内もそれなりに静かだ。
また、エンジンのスペックから想像されるほど鈍足でもないので、しっかりと流れに乗って走ることができる。
筆者のハスラーには、シエクル製のサブコンピューター「ミニコン」と「ミニコンアルファ」が取り付けてあるが、その効果もあると思う。
ノーマルのハスラーNA車の最高出力は52馬力だが、おそらく数馬力はアップしているだろう。
また、トレッドが狭くて背が高い、見るからに不安定そうなディメンションとは裏腹に、コーナリングスピードも普通のセダンやコンパクトカーになら負けない。
だが、調子に乗ってオーバースピード気味でコーナーに進入すると、さすがに途中でアクセルを緩めざるをえず、「ファースト・イン・スローアウト」の最悪な状況になってしまう。
ワインディング走行を満喫するなら重心位置の低いスポーツカーがベスト、と感じさせる瞬間だ。
スポーツカーといえば、かつて初代L880K型ダイハツ・コペンに乗っていたことがあるが、FFながらコーナーリングスピードの速さはなかなかのものがあった。
実は今回車を買い替えるにあたり、現行型コペンやホンダ・S660も候補に上げていた。
しかし、諸事情により車を1台しか所有できないため、荷物が積めない軽スポーツカーは何気に不便だ。
それと、万が一震災などで家が損壊した際に、車中泊でやり過ごしたいという思いもあった。
走りにはある程度妥協してハスラーを選んだのは、荷物が沢山詰める上、車中泊もできるからだ。
閑話休題、話を元に戻そう。
しばらく宇佐美大仁道路を走り続けると、下田街道にぶつかる交差点に出るが、そこを左折。
さらに修善寺インターチェンジ下の分岐路を直進方向に進み、県道18号線に入る。
だるま山高原レストハウスに到着
ドライブを楽しんでいるうちに、だるま山高原レストハウスに到着した。
駐車場はガラガラで、自分のほかに3台ほどしか停まっていない。
どうりで空いていると思ったら、なんと今日は定休日だった!
ここでドリンクと軽食を補給するつもりでいたので、これにはガッカリ。
そんなの聞いてないよー!と言いたいところだが、結局は自分のリサーチ不足のせいだ。
気を取り直し、併設されている展望台に向かう。
写真の中央やや左寄りが富士山だが、山頂が雲に覆い隠されているのが、お分かりいただけるだろうか(恐怖動画番組の解説みたいになってしまった)。
クリアな富士山の姿は見られなかったものの、駿河湾と彼方の山々を一望できるパノラミックビューが堪能できたので、これはこれで満足だ。
しばし眺めを楽しんだ後、次の経由地として予定している戸田峠展望台に向かう。
戸田峠展望台と瞽女展望地での眺望
程なくして、石田峠展望台に到着。
何故か「霧香峠」と表記されているので訝しく思ったが、後でググったところ石田峠の愛称らしい。
肝心の眺望だが、どうにもパっとしなかった。
見通しが悪いし、手前の木々の枝が何気に邪魔くさい。
近くに小高い丘があったので、そこなら良い展望が開けるのかと思い、階段を上ってみた。
しかし、階段の先は草生した獣道で、それより先に進むのは困難だった。
後を振り返っても眺望は全くないし、単なるくたびれもうけだ。
ガッカリ感に包まれながら、次の経由地である瞽女(ごぜ)展望地を目指す。
距離は1キロと離れておらず、すぐに到着。
瞽女とは盲目の旅芸人のことで、昔起きた悲しいできごとを悼んで観音様が祀られたとのこと。
ちなみに瞽女という言葉は現在では差別用語なので、ワードで変換しても漢字は出てこない。
最初はここも眺めはいまいちだと感じたのだが、上の写真の左側に見える遊歩道を降りていくと、素晴らしい眺望が臨める展望台があった。
遥か彼方に御浜岬が見えるが、カメラのズームレバーを望遠側にしたところ、かなり鮮明な遠景の写真が撮れた。
これなら展望地の名に恥じない場所といえるので、訪れてよかった。
御浜岬に到着
瞽女展望地を出発し、最終目的地の御浜岬に向かう。
ここから先はタイトなコーナーが多くなり、直線区間も少なくなるので、箱庭的ワインディングロードといった雰囲気になる。
ギアをサードに入れる機会はなくなり、セカンドギアのまま走行するが、エンジン回転が高まるので室内は相応に賑やかだ。
できればセカンドとサードの間にもう1段ギアが欲しい・・・つまり6速MTが欲しくなる。
とはいえ、エンジンは高回転域までスムーズに吹き上がるし、3気筒ながら振動も少ないので、静粛性を除けばストレスはない。
カーオーディオからヘビメタでも流しながら運転すれば、エンジン音も気にならなくなるかもしれない?
途中、ゆっくりと走る軽ワンボックス車(ルーフボックス付きでいかにも不安定そうだった)に追いついた。
勿論、煽り運転などはせず車間を保ちながら付いていったのだが、やがて左ウィンカーを出しながら減速して道を譲ってくれた。
追い越した後、サンキューハザードでお礼をしたが、こういう気づかいは嬉しい。
しかし、いかにもなフロントマスクのアル・ヴェルなどならともなく、乙女チックなピンクのハスラーでも譲ってくれる人がいるんだ・・・。
やがてワインディング区間が終わり、川沿いの平坦な道路に出る。
ここまで来れば、御浜岬まであと一息だ。
そして、カーナビに目的地として設定していた御浜岬公園前の駐車場に到着。
広大な駐車場には、自分のハスラーのほかに2台ほどしか停まっていなかった。
平日だからだと思うが、あまりガラガラなのも寂しい。
すぐ先の展望スペースに足を運ぶと、目の前に駿河湾の大海原が広がった。
やはり富士山は見えなかったが、果てしない海をボーっと眺めているだけでも癒される。
しばし眺望を楽しんだのち、岬の先端部を目指して歩き出す。
すると、途中にこんな案内看板が立っていた。
写真では分かりづらいかもしれないが、陸地がレリーフ状に立体的に表現されている(材質は木だろうか?)。
大分年期が入っているようで痛んでいたが、なかなか味があるではないか。
さらに足を進めると、ほどなくして岬の先端部に出た。
ここには戸田造船郷土資料博物館があり、興味があったので入館しようと思ったのだが、なんとここも定休日だった。
自分はなんと間が悪いんだろうと思う。
駐車場に引き返すにあたり、今度は岬の反対側にある遊歩道を歩くことにした。
内陸側の海には大型の漁船が2隻停泊していたが、その向こうには山々が広がり、なかなか良い風景だ。
しかし、陸地の両側に海が広がっている光景は、なんだか不思議に感じる。
眺めを楽しみながら駐車場まで戻ったが、もう1箇所行ってみたい景勝地があった。
それは御浜展望地で、駐車場から徒歩で数分の場所にある。
現地に到着すると、地図上の表記とは異なり「富士山大パノラマ 健康の森展望地」と銘打った看板があった。
今日は富士山のパノラマを見ることはできないにせよ、どんな展望が臨めるのかと期待に胸を膨らませながら階段を上る。
すると、行き止まりにある展望台では写真のような眺望が広がっていた。
さっき歩いていた御浜岬が一望できるビュースポットで、これなら富士山が見えなくても十分満足だ。
しばし眺めを楽しんだあと、再び駐車場に戻り、ハスラーに乗り込んで帰路に着く。
時計を見ると既に13時を過ぎており、お腹も空いてきたので食事処を探すことにした。
御浜岬の近辺はさすが港町だけあり、海鮮料理のお店がたくさんある。
しかし、筆者は海鮮料理がそれほど好きではないので、違うものが食べたい。
そこで、以前訪れたことがあり、十分楽しめただけでなく食事処の料理が美味しかった「修善寺 虹の郷」に寄ることにした。
修善寺 虹の郷で料理に舌鼓を打つ
修善寺 虹の郷は広大な敷地面積を誇るテーマパークで、イギリスやカナダの街並みが再現されているほか、日本庭園などもある。
また、園内にはイギリスの協力で敷設されたミニ鉄道「ロムニー鉄道」の列車が運行されているなど、見所満載だ。
修善寺 虹の郷に到着すると、寒い冬の平日であるためか駐車場はガラ空きだった。
筆者の停めたブロックは、ご覧のとおり「ぼっち」だ。
車を降りると、背後から「シュッ!シュッ!」というSLのブラスト音が聞こえてきた。
丁度ロムニー鉄道のSL列車が通りかかるところだったので、慌ててカメラのシャッターを切った。
すると、運転士がこちらの存在気づいたのか汽笛を鳴らしてくれた。
もしかすると、この場所で汽笛を鳴らすのは単なるルーティンワークなのかもしれないが、自分への挨拶だと思い込んだ方が気分がいいじゃないか。
入園口のある建物は、ご覧のようになかなかオサレな(多分、英国風の)デザインだ。
入園料1,200円也を支払って園内に入ると、まずはお土産屋になっているイギリス村の街並みが迎えてくれる。
平日のためほとんど人気がなく、まるでゴーストタウンのようだったが、ひとつの建物から女性従業員が出てきて「お土産が色々あるので、よろしかったら帰り際に寄ってください」と笑顔を振りまく。
ここの従業員はみなフレンドリーなので、とても気分が良くなるのだ。
さらに先に進むと、ホンモノのロンドンバスを使った移動販売所、もとい固定販売所が目に入る。
バスの中に入れると嬉しいのだが、それはできないようだ。
また、オースチン製のバンの姿もあった。
車名までは分からなかったが、クラシカルな出で立ちからして戦前のモデルであることは間違いないだろう。
インパネには、いかにも英国車らしいウッドパネルが張られ、ステアリングホイールもウッド製だ。
こういう車で街中をドライブしたら、さぞや楽しいだろうな。
そこから少し離れた場所には、園内を周遊するボンネットバスの姿もあった。
こちらは日産製の「なんちゃってレトロバス」で、運転席をのぞき込むと現代的でプラスチッキーなインパネが付いていた。
まあ、インパネまでこだわってレトロ風にしろという方が無理か。
そしていよいよお腹が減ってきたので、食事処に足を向ける。
「伊豆の村」というブロックには数件の食事処や土産屋が立ち並ぶが、その中ら「このはな亭」という食事処でランチをとることにした。
メニューは和食や洋食、ラーメン、スイーツ、スムージーなど実に多彩だが、健康オタクである筆者はヘルシー系の料理を4点チョイスしてオーダー。
接客してくれた店員のお姉さんも、フレンドリーで愛想が良かった。
そして待つこと10分ほどで、料理が届いた。
上の写真が「こんにゃく田楽」と「焼き鳥串」、下の写真が「ぶっかけとろろそう麺」と「しいたけ焼」だ。
お味の方だが、いずれも絶品だった。
自家製の味噌を使っているというこんにゃく田楽は、見た目の感じと違ってしょっぱくはなく、まろやかな味。
焼き鳥串は、スーパーの総菜コーナーに置いてある焼き鳥の10倍美味しい。
また、しいたけに対してはそれほど美味しい物ではないという先入観を持っていたのだが、それを覆す美味しさだった。
そして、ぶっかけとろろそう麺も、汁に上品な旨みがあってとろろとの相性もバッチリ。
しめて1,700円程の出費となったが、それも納得の満足度だった。
店を出る際、店員のお姉さんに「とても美味しかった」と伝えたところ、「これオマケです」と言いながらキットカットを1個くれた。
料理の味を褒めると、いいことがあるものだ。
お腹が満たされたところで園内をぐるっと周遊し、再びイギリス村に戻った後、15インチレイルウェイミュージアムに入館。
館内では、実際に園内で運行されているSLなどの姿を見ることができる。
レールの幅は文字通り15インチ(381mm)と極めて狭く、黒部渓谷鉄道など一般的な軽便鉄道の762mmと比較しても半分しかない。
機関車もまるでライブスチーム(蒸気で走る大型鉄道模型)のように可愛らしいし、色もカラフルで綺麗だ。
そしてこんなちっぽけな車両なのに、イギリス本国では市民の足として利用されているというから驚きだ。
閉園時間も迫っていたので修善寺 虹の郷を後にし、帰路に着いた。
西伊豆・御浜岬をドライブしてみて
今回のドライブは、富士山がクリアに見えなかったりレストハウスが休みだったりといったマイナスポイントはあったものの、結果的に十分楽しめた。
海と山が見える景観の良いスポットがあったし、初めて西伊豆の地を踏んだこと自体に満足感があったからだ。
また、大半がワインディングロードで占められるルートで走りを楽しめたことも大きい。
ピンクの相棒よ、よくぞ頑張ってくれた!
そして、修善寺 虹の郷での食事が美味しかったことも、満足度が高くなった理由のひとつだ。
皆さんも、できれば富士山が満喫できるよう事前に「伊豆市ライブカメラ」などで確認してから、このドライブコースを走ってみてはいかがだろうか?