実用的なハッチバック車にパワフルなエンジンを搭載し、走りを追求したモデルを通称ホットハッチと呼ぶ。
ボディサイズがコンパクトなので、狭い日本の道路事情にもピッタリだ。
また、エンジンがパワフルとは言え公道で使い切れるパワーなので、躊躇なくアクセルを踏める点もいい。
そして、価格が比較的廉価に抑えられている点も魅力にあげられる。
ここでは予算300万円以内で買えるホットハッチを5台ピックアップし、それぞれの特徴を紹介していきたい。
300万円以内で買えるおすすめホットハッチは、この5台だ!
無敵のコストパフォーマンスを誇る、スズキ・スイフトスポーツ
2,017,400円~2,141,700円
まず最初に紹介したいのが、スズキのスイフトスポーツだ。
ノーマルのスイフトとは異なる3ナンバーサイズの専用ボディが与えられ、威圧的なフロントグリルと相まってやる気満々の外観になっている。
エンジンは1.4L直4ターボで、最高出力140ps / 5,500rpm、最大トルク23.4kg・m / 2,500~3,500rpmのアウトプットを発生。
ノーマルのスイフトよりは遥かに強力だが、圧倒的にハイパワーというほどではない。
しかし、スイフトスポーツには車体の軽さという大きな武器がある。
6MT仕様で970kg、6AT仕様でも990kgと1トンを切っているのだ。
この軽さのお陰で、エンジンのスペックから想像する以上の爽快な加速を披露してくれる。
かと言って決して持て余すほどの速さではないし、低速域から豊かなトルクを発生するので誰にでも扱いやすい。
免許の問題がなければ優れたシフトフィールを持つ6MT仕様がおススメだが、6AT仕様でも十分楽しめる。
そして、ハンドリングの良さもスイフトスポーツの魅力のひとつだ。
キビキビと軽快なフットワークを披露してくれるし、ステアリングフィールも抜群にいい。
ワインディングにスイフトスポーツを持ち込めば、正に水を得た魚のような走りを披露してくれる。
これだけの走行性能を備えた車が200万円そこそこで買えるのは、お買い得以外の何物でもない。
コストパフォーマンスなら天下無敵のホットハッチ、それがスイフトスポーツだ。
圧倒的なシャシー性能が魅力の、トヨタ・GRヤリス RS
2,650,000円
トヨタのGRヤリスは、いま一番注目度の高いホットハッチと言っていいだろう。
グレードは3タイプ用意されているが、世間の目はどうしても1.6L直3ターボエンジン+4WDの「RZ」や「RZハイパフォーマンス」に向きがちだ。
確かにパフォーマンスの高さは圧倒的だが、公道ではなかなかそのパワーを使い切る機会がないし、価格も約400~450万円するので万人向けとは言えない。
そこで出番なのが、FF方式の最廉価グレード「RS」だ。
搭載エンジンはノーマルのヤリスと共通の1.5L直3NAで、最高出力120ps / 6,600rpm、最大トルク14.8kg・m / 4,800~5,200rpmのスペックにも変更がない。
しかもトランスミッションはCVTのみの設定で、ヤリスと異なりMTが選べない仕様となっている。
これだけを聞くと、ダメダメな「なんちゃってホットハッチ」のように思うかもしれない。
しかし、GRヤリス RSはスペックだけでは決して語れない車なのだ。
まず、4WDモデルと共通のボディの剛性感が抜群に高いところがいい。
カーボンルーフもコストダウンの犠牲になることなくそのまま受け継いでいるので、重心の低さも4WDモデル譲りだ。
加えて車両重量が4WDモデルより150kgも軽いため、コーナリングの軽快感はRSの方が勝っている。
このコーナリング性能には、4WDモデルと共通の4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションが一役買っていることも付け加えておきたい。
また、ヤリスそのもののエンジンも意外と活発だ。
1,130kgのボディにとって十分な力があるし、CVTもラバーバンドフィールが抑えられているので、運転の楽しさに水を差されることもない。
シフト操作が不要なので、ワインディングでステアリング操作に集中できるメリットもある。
265万円という価格は、同じエンジンを搭載するヤリスより70~100万円ほど高価だ。
しかし、ヤリスとは次元の異なるハンドリングを堪能できる点や、4WDモデルと同じスタイリッシュなボディが手に入ることを考えれば、決して割高ではない。
単なるGRヤリスの廉価版ではない独自の魅力を持つグレード、それがRSだ。
モータースポーツのベース車両にもおススメの、マツダ・マツダ2 15MB
1,650,000円
スイフトスポーツやGRヤリスと比較すると、マツダ2 15MBはいささか地味な存在かもしれない。
ボディはノーマルのマツダ2と共通だし、圧倒的なパフォーマンスを誇るわけでもないので、目立たないことは確かだ。
しかし、実は隠れた良車と呼ぶに相応しい魅力を備えているので、是非紹介しておきたかった。
この15MBというグレードは、モータースポーツのベース車両と位置づけられている。
エンジンは1.5L直4NAで、型式こそ他のマツダ2と共通だがハイオク仕様に変更されているのが特徴だ。
その結果、最高出力が6ps高い116ps / 6,000rpmに、最大トルクは0.8kg・m高い15.2kg・mに向上している。
トランスミッションは6MTのみの設定で、車両重量は他のどのグレードより軽い1,020~1,040kgだ。
走りはなかなか活発で、NAならではのレスポンスと相まって楽しく運転できるし、回すと意外なほど勇ましくなる排気音も心地いい。
足回りはノーマルグレードと比べ特に強化されていないが、元々素性のいい車なのでハンドリングも良好だ。
ただロールは大きめなので、不満があれば社外品の車高調サスペンションに交換するといいだろう。
価格が165万円と非常に安いのは魅力だし、自分なりにコツコツ手を加えていく楽しみもある。
マツダ2 15MBは、ホットハッチの大穴的な存在だ。
古典的な味わいが貴重な、日産・マーチ ニスモ S
1,876,600円
ここまで紹介してきた3台は、洗練されたモダンなホットハッチと言える。
それに対し、日産のマーチ ニスモ Sは古典的な味わいを持ったホットハッチだ。
マーチをベースにエアロパーツやボディ補強パーツで武装したボディに、専用サスペンションが組み込まれている。
エンジンは専用チューンが施された1.5L直4NA (最高出力116ps / 6,000rpm、最大トルク15.9kg・m / 3,600rpm)で、組み合わせられるトランスミッションは5速MTだ。
このエンジンはとてもレスポンスが良く、吹け上がりもシャープなのでスペック以上にパワフルに感じる。
車両重量が1,010kgと軽いこともあり、加速性能も十分だ。
また専用エキゾーストシステムが奏でる排気音も心地よく、運転していると気分がハイになる。
ハンドリングはかなりクイックで、思いのほか限界も高い。
このパワートレインとハンドリングのお陰で、ワインディングをミズスマシのように駆け回ることができる。
ただし乗り心地はハードで、お世辞にも快適とは言えない。
だがそうしたスパルタンな面も含め、マーチ ニスモ Sには最近のホットハッチでは得難い味がある。
豊富に用意されているニスモパーツを組み込んで、更にパフォーマンスを向上させられる点も魅力だ。
価格も1,876,600円と手頃だし、いまのうちに手に入れておいた方がいいかもしれない。
山椒は小粒でもピリリと辛い、アバルト 595
3,000,000円 (5MT車)
最後に紹介するのは、唯一の輸入車となるアバルト 595だ。
595シリーズのうち最もベーシックなモデルで、5MT仕様ならここで設定した条件にギリギリ収まる300万円ジャストに収まる。
アバルト 595のベースモデルは、人気コンパクトカーのフィアット500だ。
しかし、様々なモディファイによりベースモデルとは一味も二味も異なるホットなモデルに仕上げられている。
搭載されるエンジンは1.4L直4ターボで、最高出力145ps / 5,500rpm、最大トルク18.4kg・m / 2,000rpm (スポーツスイッチ使用時で21.4kg・m / 3,000rpm) のアウトプットを発生。
595シリーズの中で最も大人しいスペックだが、1,110kgの車体には十分以上だ。
0-100km/h加速を7.8秒でこなすのだから、ほとんどの人は速さに不満など感じないだろう。
そして、実際のパフォーマンス以上に魅力なのがエンジンのフィーリングだ。
元気いっぱいの吹け上がりや、可愛らしい外観からは想像もつかない排気音がドライバーをやる気にさせてくれる。
ハンドリングもとても機敏だし、乗り心地だって悪くない。
もし運転免許の問題などでMT車のチョイスが不可能な場合は、条件からは外れるが26万円高で2ペダルのAMT車を選ぶことも可能だ。
見て楽しく乗っても楽しい、それがアバルト595の魅力と言える。