スタイリッシュな外装デザインや優れた走行性能が魅力のマツダ3。
このマツダ3にはマツダ自慢のエンジン、スカイアクティブXが設定されているが、従来は価格に見合ったパフォーマンスとは言い難かった。
しかし、2020年11月にスカイアクティブXのバージョンアップが実施され、パフォーマンス向上を果たしている。
そこで、果たしてスカイアクティブXはマツダ3の本命エンジンになったのかどうかを、改めて検証していきたい。
スカイアクティブXはマツダ3のエンジンの頂点
まず、マツダ3のエンジンラインナップを整理してみよう。
項目 / エンジン | スカイアクティブG-1.5 | スカイアクティブG-2.0 | スカイアクティブD | スカイアクティブX |
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排気量・仕様 | 1.5Lガソリンノンターボ | 2Lガソリンノンターボ | 1.8Lディーゼルターボ | 2Lガソリンスーパーチャージド+モーター |
最高出力 (ps / rpm) | 111 / 6,000 | 156 / 6,000 | 130 / 4,000 | 190 / 6,000 (エンジン+6.5 / 1,000 (モーター) |
最大トルク (kg・m /rpm) | 14.9 / 3,500 | 20.3 / 4,000 | 27.5 / 1,600~2,600 | 24.5 / 4,500 (エンジン+6.2 / 100 (モーター) |
WLTCモード燃費 (km/L) | 15.8~17.8 | 15.2~16.7 | 18.8~19.8 | 16.2~17.8 |
搭載グレード | 15Sシリーズ | 20Sシリーズ | XDシリーズ | Xシリーズ |
車両価格 (円) | 2,221,389~3,163,369 | 2,515,741~3,290,936 | 2,790,741~3,565,936 | 3,198,148~3,973,343 |
スカイアクティブXは、マツダ3に用意される4種類のエンジンの中で頂点に位置づけられる。
最高出力は他のエンジンを圧倒し、最大トルクもスカイアクティブDに次いで大きい。
同じ2LガソリンのスカイアクティブG-2.0と比較しても、最高出力で34ps、最大トルクで4.2kg・mも勝る。
加えてスカイアクティブXは、小出力のモーター (ISG) が組み合わせられるマイルドハイブリッドシステムなので、燃費性能でも有利だ。
ただし、車両価格は他のエンジンを搭載するグレードよりかなり高額に設定されている。
そこがスカイアクティブX最大のネックと言えるだろう。
究極の内燃機関を目指したスカイアクティブX
ここで、改めてスカイアクティブXについておさらいしておこう。
スカイアクティブXは、ガソリンエンジンでありながらディーゼルエンジンのような圧着点火を行い、希薄燃焼 (リーンバーン) を可能としている。
希薄燃焼させるためには大量の空気を吸入する必要があるので、過給機としてスーパーチャージャーを搭載する点が特徴だ。
更に燃費性能や走りを向上させるため、24Vのマイルドハイブリッドシステム「Mハイブリッド」が組み合わせられる。
アイドリングストップからの再始動にISGを使用するため、キュルキュル音が出ないのはメリットだ。
また、6MT車ではISGをスムーズな変速のために活用するなど、マイルドハイブリッド化の恩恵は予想以上に大きい。
しかしスカイアクティブXの最大のメリットは、スカイアクティブGのような従来のガソリンエンジンと比べパワフルなことに加え、リニアなスロットルレスポンスが得られる点にある。
更に高回転域の伸びの良さや、エンジン音の心地良さもスカイアクティブXの魅力にあげていいだろう。
スカイアクティブXは改良によりパフォーマンスが向上
最初に述べたように、スカイアクティブXは2011年11月のバージョンアップでスペックが向上している。
バージョンアップ前 最高出力180ps / 6,000rpm、最大トルク22.8kg・m / 3,000rpm
バージョンアップ後 最高出力190ps / 6,000rpm、最大トルク24.5kg・m / 4,500rpm
バージョンアップ後は最高出力が10ps、最大トルクが1.7kg・m向上、このスペックアップは実際の動力性能にしっかり反映されている。
スロットルレスポンスは一段と向上し、アクセルを踏み込んだ時のパンチ力もアップした。
圧倒的な差ではないものの、高回転域の伸びも更に良くなっている。
従来はメーカーが謳うほどのメリットは感じられなかったスカイアクティブXだが、現行モデルはなるほどと膝を打ちたくなる向上ぶりだ。
しかも価格は据え置きなので、コストパフォーマンスは確実に高くなっている。
このスカイアクティブXに対し、通常のスカイアクティブG-2.0は特に改良を受けていないので、パフォーマンスの差は一層広がった。
それは、スカイアクティブXに付きまとっていた割高感が小さくなったことも意味する。
スカイアクティブXはマツダ3の本命に一歩近づいたが・・・
スカイアクティブXは改良によりパフォーマンスが向上し、絶対的なコストパフォーマンスは高まった。
スカイアクティブG-2.0と比べた場合、予算の問題さえなければ絶対スカイアクティブXを選んだ方がいい。
ただ、スカイアクティブDと比べた場合の評価は微妙だ。
スカイアクティブDもスカイアクティブXと同時にバージョンアップを受け、パフォーマンスが上がっているからだ。
トルク感はスカイアクティブXより上だし、経済性でも上回る。
特に飛ばさず普通のペースで走る人や、燃料代を気にする人にはスカイアクティブXよりもスカイアクティブDの方がおススメだ。
また特に改良は施されていないものの、スカイアクティブG-1.5も相変わらず捨て難い。
スペック上は非力だが、シャープな吹け上がりとサウンドの良さはスカイアクティブXに見劣りしないし、何より価格が約80~100万円も安いのは魅力だ。
街乗りがメインなら敢えてスカイアクティブXを選ぶまでもなく、スカイアクティブG-1.5で十分だろう。
スカイアクティブXは魅力的なパワートレインであることは間違いないが、マツダ3のエンジンの大本命とまでは言えない。
スカイアクティブX搭載車は、ワインディングをスポーティーに走りたい人やたまにはサーキット走行も楽しみたい人、高速道路で追い越しを頻繁にかける人などにはおススメできる。
しかし高価であるし、力強さが全エンジン中でベストでないことなどから、万人におススメとまではいかない。
スカイアクティブX搭載車は、予算やニーズと相談しながら慎重に選んだ方がいいだろう。