トヨタの高級SUVハリアーは、このカテゴリーでは圧倒的な人気を誇る。
高額な車にも関わらず売れているが、人気に値する魅力を持っているのだろうか?
ここではハリアーは本当にイイ車なのかを検証するため、プラットフォームを共有する同クラスのSUV、RAV4との徹底比較を試みる。
ハリアーはRAV4より一クラス上の車種
まず、ハリアーとRAV4のスペックと価格を比較してみよう。
項目 / 車名 | ハリアー | RAV4 |
---|---|---|
全長×全幅×全高 (mm) | 4,740×1,855×1,660 | 4,600×1,855×1,685
(※アドベンチャーは4,610×1,865×1,690) |
車両重量 (kg) | 1,530~1,750 | 1,500~1,690 |
パワートレイン | 2Lガソリン / ハイブリッド | 2Lガソリン / ハイブリッド |
WLTCモード燃費 (km/L) | 14.7~22.3 | 15.2~21.4 |
価格 (万円) | 299~504 | 274.3~402.9 |
ハリアーのボディサイズをRAV4と比較すると、全長が長い一方で全高は低く設定されている。
車両重量はハリアーの方が若干重い。
2台のパワートレインは基本的にスペックも含め共通だが、ハイブリッドのバッテリーはハリアーがリチウムイオン、RAV4がニッケル水素という違いがある。
価格レンジはハリアーの方が高く、RAV4の一クラス上の車種と位置付けていいだろう。
外装はハリアーの方が高級感が高い
次に、ハリアーとRAV4の外装デザインを比較する。
上がハリアー、下がRAV4の画像だが、プラットフォームを共有する兄弟車種とは言えデザインは全く異なる。
クーペテイストのスタイリッシュなフォルムを持つハリアーに対し、RAV4はクロカンテイストが強く厳ついイメージだ。
デザインの方向性が違うので優劣を付けるのは難しいが、高級車のイメージが強いのはハリアーだ。
内装もハリアーの方が上質
ハリアーとRAV4の内装はどこが違うのだろうか?
比較にあたり条件を揃えるため、どちらもGグレードの内装を選んだ。
内装デザインは外装ほどの違いはないが、それでも造形に志向性の違いが見て取れる。
RAV4が機能性を重視しているのに対し、ハリアーは上質感を演出しようという意図が明白だ。
デザイン面だけでなく、マテリアル面でもハリアーはソフトパッド張りのインパネや合皮巻きのフロントドアトリム、表皮巻きピラーなどRAV4にはないこだわりが見られる。
また、ハリアーにはRAV4にはないレザーシート仕様車が設定されるなど、価格帯が高い分高級志向が強い。
室内スペース、荷室スペースではハリアーが劣る
ハリアーとRAV4の室内スペースを比較してみよう。
室内スペースは前席に関してはほとんど差はないが、後席はRAV4の方が僅かに広い。
足元のスペースは同等だが、ハリアーはルーフが後ろ下がりになっているため、頭上のスペースが若干少ないのだ。
大柄な人が日常的に後席に乗る場合、ハリアーよりRAV4を選んだ方がいいかもしれない。
では、荷室スペースはどうだろうか?
この画像からはピンと来ないだろうが、後席使用時の荷室容量はハリアーが409L、RAV4が最大580Lと約170Lもの差がある。
RAV4ならゴルフバッグが4つ余裕で詰めるが、ハリアーは後方視界を考えると4つは少し厳しい。
また後席をたたんだ時の荷室スペースも、ハリアーが1,045L、RAV4が最大1,185Lと140Lの差がある。
荷物を沢山積む機会のある人にとって、ハリアーは若干不安が残るだろう。
静粛性と乗り心地でハリアー、動力性能と操縦性でRAV4が有利
続いて、走行性能はどちらが優れているのか検証する。
まず動力性能に関してだが、パワートレインは最高出力・最大トルクも含め2台に違いはない。
だがハリアーは車両重量がRAV4より30~60kgほど重いため、動力性能の点で若干不利だ。
実際の加速性能も、ハリアーはRAV4に対し僅かながら劣る。
操縦性に関してはどちらもかなりハイレベルで、甲乙付け難い。
だが、ガソリン4WD車の上級グレード同士で比較した場合はRAV4が優位に立つ。
RAV4のガソリン4WD車の上級グレードには、コーナリング時の旋回性や安定性を高めるトルクベクタリング機構が備わるからだ。
一方で、静粛性や乗り心地ではハリアーに分がある。
車内に進入するエンジン音やロードノイズはRAV4よりも低く、静粛性が高い。
また乗り心地もRAV4にも増してフラットなので、快適性を重視するならハリアーに分がある。
快適・安全装備はハリアーの圧勝
最後に、ハリアーとRAV4の快適・安全装備を比較する。
快適装備 / 車名 | ハリアー | RAV4 |
---|---|---|
アダプティブハイビームシステム | 〇 | × |
カラーヘッドアップディスプレイ | 〇 | × |
運転席オートスライドアウェイ | 〇 | × |
助手席パワーシート | 〇 | × |
運転席・助手席シートベンチレーション | 〇 | △ |
本革シート | 〇 | × |
Tコネクトナビ | 〇 | △ |
JBLプレミアムサウンドシステム | 〇 | × |
〇:設定あり
△:オプション
×:設定なし
この表から分かるとおり、ハリアーとRAV4の装備の差は歴然だ。
以下で、各装備について解説する。
アダプティブドライビングビーム
先行車や対向車を検知すると、ハイビームを維持したまま照射範囲を調整する装備だ。
ハリアーはSを除く全車に標準装備する。
対してRAV4の全車に装備されるのは、先行車や対向車を検知するとハイビームからロービームに切り替えるオートマチックハイビームだ (※ハリアーのSもオートマチックハイビーム)。
夜間走行時の安全性は、明らかにアダプティブドライビングビームが勝る。
カラーヘッドアップディスプレイ
ドライバー正面のフロントウィンドウに、速度など運転に必要な情報を投射する装備。
メーターを見るよりも視線の移動量が少ないので、安全運転に結び付く。
ハリアーはZ系グレードに装備されるが、RAV4には設定がない。
運転席オートスライドアウェイ
エンジンスイッチやパワースイッチのオンオフ、シートベルトの着脱により自動で運転席が前後にスライドする装備だ。
乗り降りが容易になるので、特に乗り降りの機会が多い街乗りでメリットが大きい。
ハリアーはレザーパッケージ系グレードに装備されるが、RAV4には設定がない。
助手席パワーシート
助手席のスライドとリクライニングを電動調整できる装備。
スイッチ操作で簡単に快適なポジションが選べるので、助手席の乗員に喜ばれるだろう。
ハリアーのレザーパッケージ系専用の装備で、RAV4では全車手動調整式となる。
運転席・助手席シートベンチレーション
座面と背もたれに涼風を送り、夏場の蒸れを防ぐ装備。
ハリアーではレザーパッケージ系グレードに標準装備されるが、RAV4は一部グレードにオプション設定されるに留まる。
本革シート
ハリアーのレザーパッケージ系グレードは、手触りと高級感が魅力の本革シートを採用。
RAV4には本革シートの設定はない。
Tコネクトナビ
ハリアーのZグレードは、通信機能付のTコネクトナビを標準装備する。
対するRAV4は、ナビは全車オプションとなる。
JBLプレミアムサウンドシステム
アメリカの名門オーディオメーカー「JBL」とトヨタが共同開発した高音質オーディオシステム。
9つのスピーカーから臨場感溢れるサウンドを再生する。
ハリアーはグレードにより標準装備またはオプション設定されているが、RAV4では選ぶことができない。
ハリアーは総合的にRAV4を凌駕!
ハリアーはRAV4と比較して、内外装の高級感や乗り心地、静粛性、装備において勝っている。
後席の居住性や荷室スペースではRAV4に一歩を譲るものの、総合的にはハリアーはRAV4を凌駕する車と言えるだろう。
価格はRAV4よりも高いが、ハリアーにはそれだけの価値がある。
RAV4の道具感のあるデザインが好き、荷室スペース優先という場合は別だが、一般的にはハリアーの方が高い満足度が得られるはずだ。